電車の運転士は早死？タクシー・トラック運転手と比較！健康リスクの対策は？

早死にする職業ランキングで上位に名を連ねるタクシー運転手やトラック運転手。

であれば、電車の運転士だって早死にする職業ランキング上位なのでは？

確かに人身事故や天災といった異常時の不安を抱えながら、狭い空間で座りっぱなし、かつ泊り勤務もある電車の運転士。

この記事では元JR総合職の筆者が電車の運転士が「早死にする職業」なのかどうか、タクシー・トラック運転手と比較した働き方やリスクの違いについて解説。

後半には電車の運転士としての健康リスクを少しでも下げるする方法を書いた。

電車の運転士として働くことに疲れた人や不安に感じている人は読んでみてほしい。

電車の運転士・タクシー・トラック運転手は「早死する職業」何位？

早死にする企業ランキングと呼べるようなランキングについては2013年の日刊SPA！、海外の「最も危険な職業」に加えて個人ブロガーが解説するランキングが参考になった。

「早死にする職業」の定義もそれぞれに記載されているため、それらまとめて紹介する。

結論を言えば、今回紹介する早死にする職業ランキングに電車の運転士はランクインしていない。

一方で、タクシー運転手は「日刊SPA!」の早死にする職業ランキング6位、「個人ブロガー」の早死にする職業3位にランクイン。

トラック運転手は「日刊SPA!」の早早死にする職業ランキング10位、「海外記事」の最も危険な職業ランキング5位にランクインしている。

早死にする職業ランキング (日刊SPA!)

【早死にする職業ベスト10】 1位　大手広告代理店の営業 2位　IT企業の下請けSE 3位　チェーン飲食店店長 4位　若手官僚 5位　病棟勤務の看護師 6位　タクシー運転手 7位　LCCの客室乗務員 8位　自衛官 9位　公立学校の教員 10位　トラック運転手

参照：日刊SPA!

この記事によると、職業が寿命と関連する要因として「裁量権の有無」「過重労働・暴飲暴食」を挙げている。

自分で自分の仕事をコントロールできるほどストレスが低く長生きする傾向がある。

さらに深夜残業や徹夜が当たり前の仕事や接待・営業での過剰飲酒といった要素が早死ににつながるとしてこれらの仕事をランキングに連ねているようだ。

最も危険な職業ランキング (海外記事)

この記事は「世界で最も危険なトップ10の職業」を紹介し、安全対策の重要性を強調している。

林業労働者、航空機のパイロットや屋根工、トラックドライバーなどランキングに入った職業のリスクを詳しく説明し、安全対策のヒントを提供している。

肉体的・精神的な要因による早死にというよりは単純に危険度の高い仕事についてのランキングとなっていることから電車の運転士が入る可能性はもともと低いはずだが、死因やそのリスクを防ぐ方法についての記述があり参考になる。

早死にする職業ランキング (個人ブロガー)

タクシー運転手が3位にランクインしているが、電車の運転士は早死にする職業としてランクインしていない。

この記事では、早死にする・寿命が縮む職業の共通点や特徴として以下の条件を挙げている。

・体や心に負担のかかる仕事
・長時間同じ姿勢を強制される
・長時間同じ作業を強制される
・自己裁量が少なくノルマや納期が厳しい

この中で「タクシー運転手の仕事」は電車の運転士が苦しむ早死に要因とかなり合致しているように感じる。

例えば「座りっぱなしの仕事」からくる閉塞性動脈硬化症、腰痛といった身体的問題。

運転中に起こる、人身事故や災害、線路トラブルなど異常時対応によるストレス。

早死にランキングに電車の運転士がはいっていないくとも、これらの職業と重ね合わせると合致する要因があると理解できる。

電車の運転士、タクシー・トラック運転手との早死リスク比較

電車の運転士、タクシー運転手、トラック運転手それぞれの寿命や早死にリスクとなりうる要因について調査をして比較をした。

運転士・運転手は短命？実際のデータ

電車の運転士、タクシー運転手、トラック運転手それぞれの公式な平均寿命を探してみた。

統計として取れたのはアメリカにおけるトラック運転手の平均寿命(Average Life Expectancy)のみで、アメリカの統計当時の平均寿命78.7歳に対して61歳。

タクシー運転手に関しては、yahoo!知恵袋のソース不明情報ながら、平均の死亡年齢は69歳(3年244名対象)とのこと。

電車の運転士に関して、残念ながらデータはないものの、蒸気機関車の運転士が激務で定年後5年以内になくなる人が多かったという噂もあったそうだ(Yahoo!Japanしごとカタログ)。

かなり過去の話かつ噂話の域を出ないため、統計データは無い。

以下それぞれの仕事が抱えるリスクをマッピングしてみた。

早死にリスク項目	電車	タクシー	トラック
運動習慣の不足
食生活の乱れ
睡眠習慣の乱れ
トラブル対応の心理的リスク
交通事故のリスク
排気ガス・騒音など環境リスク
高肥満・高喫煙率

マッピングしてみると、交通事故のような物理的な危険や排気ガスや騒音などの環境リスクが少ない点を除き、生活の質の面でタクシー運転手やトラック運転手とかなり近い状況だと言える。

それぞれの職業に関するリスク要因をまとめた。

電車の運転士の早死にリスク

電車の運転士として特有の早死にリスクとしては、人身事故といった心的外傷のストレスが大きいだろう。

このような出来事に運悪く遭遇した場合、ストレス障害(PTSN)を引き起こすリスクもありその影響は計り知れない。

先述のとおり、機関車がたくさん走っていた時代であれば、煙害からくる肺がん・胃がんといったリスクも一般人に比べれば多かったはずだが、過去のこととして参考程度に残しておいた。

タクシー運転手の早死にリスク

タクシー運転手の早死に要因も似たような内容が多い。

トラックの運転手や電車の運転士に比べると客単位のトラブルが起きやすい点がストレス因子としては大きいと想定する。

またトラックや電車の運転士のようにあらかじめ決まった行路がない場合、自ら顧客を探しに行くことや待機時間のつぶし方も考える必要がある。

自由度が高い分、高いモチベーションを維持し続けるのも難しいだろう。

トラック運転手の早死にリスク

トラック運転手については平均寿命の短さが公表されている。

その理由として挙げられる高い喫煙率や肥満体型からくる心血管疾患および代謝性疾患が直接的な早死に原因となっていることが分かった。

電車の運転士として働く早死にリスク要因

先ほど比較した「電車の運転士の早死にリスク要因」に関して、もう少し詳しく見ていきたい。

「不規則勤務による食習慣、睡眠習慣、運動習慣」と「孤独・異常時への不安からくるストレス」に集約できる。

電車の運転士の早死にリスク要因をこの2点にまとめて調べてみた。

不規則勤務による食習慣、睡眠習慣、運動習慣

不規則な勤務スケジュールは、睡眠障害や慢性的な疲労、さらには心血管系の疾患につながるリスクがあるとされている。

例えば国際がん研究機関（IARC）、世界保健機関（WHO）の専門機関は2007年に発表した研究で夜勤を「がんのおそれがある」とするグループ2Aに分類した。

生物学的リズムの乱れ、メラトニンの生成低下を主因とした長期間にわたる夜勤が、乳がんのリスクを高める可能性があるというエビデンスに基づいている。

当然不健康な食生活、運動不足、そして睡眠障害が心血管系に悪影響与えることから、高血圧や心臓病のリスクを高める要因ともなる。

孤独・異常時対応やミスの許されない仕事

長期間にわたる高ストレス環境は、不安障害、うつ病、燃え尽き症候群などの心理的健康問題を引き起こす可能性がある。

ミスが許されない職場では、失敗への恐怖がこれらの状態を悪化させる場合も。

このような過度なストレスは、心理的健康問題のみならず身体的健康問題にも関連する。

ストレスホルモン(コルチゾール)が常に高いレベルにあることで免疫システムの機能低下、高血圧、心血管疾患といった体への悪影響があるという。

電車の運転士が感じる心身への影響：本音と現実

それでは実際に働いている電車の運転士は、過酷な勤務についてどのように感じているのか。

SNSや口コミサイトを探してみた。

電車のとしては働いている人は同じような気持ちになったことが一度や二度はあるだろう。

SNSでは電車の運転士がストレス・激務・不規則時間を背景に「早死に」しそうだ、との感想を多く見つけることができる。

口コミサイトでも同様。

多くの社員の退職理由に、不規則な勤務時間や仕事のストレスが見て取れる。

電車の運転士の早死にリスクを減らす具体的な対策

紹介してきたような不規則勤務、ストレス、激務と言った早死にリスクのある要素について、改善策を提案する。

筆者自身も現場勤務時代、慣れるまでの間はかなり心身ともに疲労がたまっていたが、生活習慣を改善することで泊りでも日勤でも安定して力を発揮できるようになった。

現場経験があるからこそわかる細かなアドバイスも入れてみたのでぜひ見てほしい。

すべて一気にできるとは思わず、一つ一つ小さなできることから取り組んでいこう。

寝不足・食生活の改善

睡眠スケジュールの確立

不規則勤務が当たり前の電車の運転士であっても、可能な限り一定の睡眠スケジュールを守ることが重要。

まず仕事のない日は極力同じ時間に寝て、起きるように心がけよう。

その上で少しでも泊り勤務の睡眠時間を確保できるよう、以下アドバイスする。

・夜終業後は同僚と談話せずすぐにシャワー、そして就寝
・喫煙者でも寝る前は喫煙所に行かない
・泊り明けの日に昼から寝すぎない (夜の睡眠を大事にする)
・泊り明けで極力飲み歩かない

質の高い睡眠環境の整備

平均すると4-5時間寝られれば良い方、という泊り勤務の睡眠時間。　

この睡眠の質を少しでも高めるためには静かで暗い環境が大事。

定刻自動起床装置に任せて、耳栓やアイマスク (疲れているときはめぐりズムなど)を使用して、集中して寝られるように気を付けよう。

・アラームは起床時間に一回のみ。あとは起床装置に任せる
・アラームは切りのいい時間・分ではなく、4:52などあえて複雑な時間に設定
・耳栓・アイマスクを活用する
・寝る前にスマホを見ない

勤務時間中の仮眠

勤務時間中は何度か数十分から一時間程度の休憩がある場合が多い。

多くの社員はスマホや同僚との談笑を楽しむが、昼から夕方の休憩時間には15分程度で良いから仮眠を挟むこと。

仮眠の効果はネットで十分すぎるほど出回っているが具体的にはこのような効果がある。

・注意力、記憶力、決断力など認知機能の向上
・睡眠不足の補填による身体と脳の回復
・ストレスホルモンレベルを下げリラックス状態促進

健康的な食生活の維持

不規則な勤務による食生活の乱れを防ぐため、極力健康的な食事を計画するべきだ。

PFC (タンパク質、脂質、炭水化物)やカロリー管理を徹底的にやれ！というわけではないが、やはり加工食品やファーストフードに頼ると明らかに体が疲れやすくなり、それらの食品に依存しやすくなる。

おにぎりだけは家で作って持っていく、毎回サラダやヨーグルトを追加するといった小さな努力も、長い鉄道人生の中では健康への大きな資産となる。

ストレスやプレッシャーへの対策

続いてミスが許されない仕事や異常時・トラブル対応で抱えるストレスやプレッシャーへの対策だ。

定期的な休息とリラクゼーション

仕事の休憩中や休日には、リラクゼーションの時間を確保しよう。

瞑想、ヨガ、読書といったストレスを軽減する活動に時間を割り当てることをおすすめする。

何か始めたいけどよくわからん！という方はとりあえず興味のある本を1日6分だけでも読んでみたり、起床後や寝る前に瞑想BGMを聴いてみたりするのがおすすめ。

適度な運動の継続

定期的な運動はストレスを軽減し、心身の健康を促す。

週に数回、朝日を浴びながら軽いウォーキングやジョギングなどをするだけでもメンタルが回復してくるのが実感できるはずだ。

友人・家族との会話

今抱えている悩みや自分の考えを話すことはストレス・プレッシャーの緩和に非常に有効な手段。

人と会話することで生まれるメカニズムから以下のような効果が得られる。

・感情の共有と発散 (カタルシス)
・社会的サポートの感覚
・問題解決の促進
・緊張緩和とリラクゼーション

同僚同士で愚痴を言うこともこのような効果を持っており、一定の理由があるのだ。

とはいっても、今の苦しみや不安を周囲の人に話しづらい場合もあるだろう。

特にキャリアをどうしたらいいか悩む人は、自分ひとりで悩み抱えることになり不安が払しょくできない。

キャリアカウンセリングのようなサポートを躊躇なく使ってみることをおすすめする。

職場・業務環境の改善

不規則勤務が続き疲労する電車の運転士も多いだろう。

ある鉄道会社では「泊り明けの仮眠から再度泊り勤務」といったかなり過酷な業務体系もあるという。

また他の鉄道会社運転士は泊り勤務が終わった後、半強制的に研修を受けさせられることが多発していると嘆く。

世の中はテレワークやフレックス勤務といった自由な働き方が当たり前となっているのに、なぜ自分だけというような経験をした場合、会社・組合に対して厳しい状況を伝えていくべきだ。

今は幸い転職会議などの口コミ媒体で他社がどのような勤務体系か知ることができる。

こういった事例を鉄道会社間で共有し、現場の働き方を改善する機会があってもよいと思う。

解決しない場合、転職も視野に入れる

電車の運転士として働くことに誇りや憧れがあっても、早死にリスクが回避できない職場・会社である場合、心身の不調をきたしてまで働くのは賢い選択ではない。

筆者自身も新入社員時代は一生この会社で終えるだろうなと思っていたが、気づけば2度も転職し、海外駐在するほどに大きなキャリアチェンジやキャリアアップを繰り返してきた。

もし少しでも鉄道会社で働き続ける不安があれば、なるべく早いうちに行動した方がよい。

以下の情報も参考にしてみてほしい。

電車の運転士は早死？タクシー・トラック運転手との比較と対策！

今回は電車の運転士が早死になのか？バスの運転手・タクシーの運転手と「早死にする職業ランキング」や早死にするリスク要因における比較から記事を作成した。

「電車の運転士」という職業としては早死にランキングに入っていないものの、日頃の生活習慣から決して油断してはいけない状況であることが理解できたと思う。

リスク要因に対しては、睡眠や食生活といった日々の生活の小さなことから改善していくことが重要である。

筆者の経験談をもとにした、かなり細かな点まで解説した。

一つでも取り入れて「早死にリスクを避ける」こと。必要があれば転職も視野に入れることを実践してほしい。