【寄稿】吉丸良治熊本県文化協会名誉会長 第2回


【寄稿】第2回

象嵌サミットとスペイン

平成11年熊本で開催された第54回国民体育大会は、天皇、皇后両陛下をお迎えして想い出深い大会であった。

両陛下がご宿泊されたホテルキャッスルにおいては、熊本県の工芸品等特産品を御案内することが計画され、私も御案内役を務めさせていただくこととなった。

熊本各地の伝統陶芸品に始まり、次は肥後象がん、400年の歴史と全国で唯一「国の伝統的工芸品」の指定を受けているのが熊本の誇りであることをお話しし、この年熊本で初めて「世界の象がんサミット」を開催した旨を申し上げる。「日本の四大産地である熊本、京都、高岡、金沢の参加と、ヨーロッパで最も盛んなスペインにも参加いただきました」と申し上げたところ、透かさず皇后さまが、「そうですか、それはよかったですね。スペインはどちらからですか、トレドですか」と。私は内心びっくりしながらも「はい、トレドから若い象がん師に参加いただきました」とお話ししたものの、私は実は、まだトレドの町を訪ねたことはなく、この時未知であった。皇后様は、「スペイン象がんは明るくきれいですよね」と明るい。両陛下はスペイン象がんに強い印象をお持ちのようであった。

私は、早い機会にスペインのトレドを訪ねこの目で確かめたいとの思いにかられた。その機会は数年後にやってきた。トレドの町はスペインの古都で、町全体が16世紀そのままの姿かと思うほどの落ち着いた街並みである。トレドの街中には象がん専門店もいくつかあって日本の雰囲気と違って賑やかであった。

日本の象がんが侘・寂の文化を反映して重厚感があるのに対し、スペイン象がんは、全体としてデザイン・色彩とも明るい印象である。

熊本では今、若い象がん師も増えて総勢20余人で元気に活動している。象がんサミットのあとスペインのトレドに学びスペイン風の象がんを創作する若者も誕生している。これも新しい歴史の流れであろうか。新しい令和の時代が楽しみである。

象嵌サミットで展示されるスペイン象嵌(熊本県伝統工芸館)